脳卒中初期診療のポイント(問診編)

現病歴問診時のポイント

脳卒中に限らず、詳細な病歴聴取は診察を行う上でもっとも大切な情報ですが、脳卒中診療においては特に次のような項目がポイントとなります。なお本文中にある各病型や病名の詳細については”脳梗塞の分類”や”若年者の脳卒中”の項をご参照ください。


発症時刻

発見時刻ではないことに注意してください。脳卒中では発症していないことが確認されている時刻 (未発症最終確認時刻)をもって発症時刻とします。 起床時発症の場合、正確な発症時間は不明であり、就寝時間を発症時刻とします。

発症時の状況

発症時に何をしていたかは脳卒中を鑑別するうえで重要です。たとえばストレスのかかる条件下での発症は脳出血や一過性心房細動からの脳塞栓などを疑うきっかけとなります。

発症前数日間の状況

同様に発症前数日間の状況も脳卒中の鑑別に有用です。以下に例をあげます。
  • 脱水をきたすような状況があったか?
例) 風邪,発熱,下痢,暑い所での仕事・運動、温泉、深酒、食欲不振など 
疑うべき病態→全ての病型、特に血行力学的機序
  • 長時間同じ体位でいるような状況があったか?
例) 飛行機、バス旅行、ギブス、映画館など 
疑うべき病態→下肢静脈血栓による奇異性脳塞栓
  • 頚部を捻るような動作がなかったか?頚部痛はないか?
例) ゴルフ、テニス、水泳、ペンキ塗り、荷物運び、車でバック、競技自転車など 
疑うべき病態→椎骨動脈解離、頚動脈解離

既往歴問診時のポイント

既往歴についてもこれまでの病気をたずねるだけではなく、以下のポイントを押さえて問診しましょう。

一過性の神経症状(TIA)

一過性の症状については意識的に聞かないと患者さん自身が忘れている場合も多いです。もしあったとすれば、いつ頃か?発症前の状況は?そのときの体位は?1回だけか複数回か?複数回あった場合はそれらが同一の症状か、異なる症状か?持続時間は?などを必ず聞きましょう。特殊な症状として一過性黒内障(片眼の視野がカーテンを降ろすように暗くなり5-6分で元に戻る)があり、これがあると同側の内頚動脈狭窄が強く疑われます。

動脈硬化の危険因子

高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙が主な脳卒中の危険因子です。いつ頃発症し、どのような治療を受けていたかも忘れずに聞きましょう。

不整脈(心房細動)、心筋梗塞、心不全症状、弁膜症の既往

これらがあれば心原性脳塞栓を疑います。

(女性の場合)習慣性流産の既往はないか?

習慣性流産の既往があれば血液凝固異常症を疑います。

微熱が持続したことがあるか?

大動脈炎症候群、血管炎症候群の可能性を考えます。

発熱の持続はないか?

感染性心内膜炎を疑い、心エコーや血液培養精査を考慮します。